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>第4回いかなごのくぎ煮文学賞 入選作品発表



第四回 いかなごのくぎ煮文学賞 グランプリ作品



≪川柳≫ 「バラ色の 老後のはずが くぎ煮色」

               和やん さん ( 千葉県館山市)



三田 完 先生 講評

数ある川柳作品のなかで、ひときわ眼を惹く一句でした。くぎ煮をストレートに詠むのではなく、高齢化社会の、ともすれば弱者に思いやりを欠く世相を「 くぎ煮色」と喝破したところに、くぎ煮文学の〈 進化〉を感じます。ほろ苦さのなかに、クスリと笑いの種子を秘めた川柳──くぎ煮の深い味わいにも相通じる作品だと思います。


準グランプリ作品



≪エッセイ≫「おふくろの味」

               沼田 敏恵 さん ( 兵庫県西宮市)


 「 釘煮が炊けたから取りにいらっしゃい」神戸に住むK君のお母さんから電話がかかる。東京に転勤になった主人の親友K君から「 年一回の親孝行代行やと思って釘煮を貰いに行ってやってくれ」と頼まれたのが初まりである。バスと電車で二時間、途中主人が「 K君のお母さんがすごいお喋りやで、そっちの方の相手はまかすわ」とサラッと云う。
 昼前に着くと「 お腹空いたやろ」と次々に餃子を焼いてくれる。食卓が餃子で一杯になり「 もう食べられません」と云うと「 持って帰って今晩食べなさい」と手際よく全部パックに詰めてくれる。「 生も仰山残ってるからこれは明日の分」と又パックに詰める。紙袋が餃子で一杯になる。餃子が一段落すると本命の釘煮登場。これも袋一杯。「 Kの所に送ったらいつも多すぎると怒られるねん。多すぎたら友達に分けてあげたらええ」とお裾分用のパック迄入っている。「 それから」と隣の部屋から一段と大きな袋を持ってくる。「 これはあちこちに釘煮送ったらお菓子やなんやら送ってくるねん、こっちは孫の物を買う時、M君( 主人のこと)のとこも同い年やし一緒に買っといた」衣類や靴が入っている。夕方の満員電車の中両手に荷物、全身から強烈なニンニクの匂いを発散させながら帰った。袋開けてみると左足ばかりの子供靴が出てきた。
K君に電話すると「 うちは右足やった。それにお菓子も賞味期限切れやカビの生えた物もあるから気をつけや」と笑った。
 六年余り続いた春の恒例行事はお母さんの入院、それに続く死で終わった。釘煮とも縁が切れた。震災後数年してお母さんの家があったあたりを歩いた。景色は一変していた。突然お母さんの釘煮が無性に食べたくなり店で買ったがどこか違う気がする。その年から自分で釘煮作りを始めた。四年位経った頃「 なんとなくお袋の味に似てきたな」とK君が云ってくれた時は思わず涙ぐみそうになった。
 私も年を取り今はもう作らない。しかし三月がくると「 釘煮が炊けたから取りにいらっしゃい」と電話がかかってくるような気がする。そして主人とおふくろの味を求めて釘煮さがしの小さな旅に出る。



三田 完 先生 講評

エッセイは他のジャンルに較べて応募作が少なかったのですが、いずれも力作でした。文章に登場するK君のお母さんは親切なおばちゃんですが、おっちょこちょいで、がさつな一面があります。そんな彼女を魅力的に描く作者の温かさが伝わってきました。


特選作品



≪ 川柳 ≫ 「 定まらず ブレるくぎ煮の 味がいい 」

               稲岡 俊一 さん ( 東京都練馬区)



三田 完 先生 講評

毎年ちょっとずつ違うくぎ煮の味、その家その家で微妙に異なる味わい──それもまた、くぎ煮が私たちの暮しに息づいている証拠です。多少のブレは気にせずにおおらかに生きたいですね、人生は。



≪ 俳句 ≫ 「 幼な日のくぎ煮の味や涅槃西風 」

               鈴木 進市 さん ( 愛知県小牧市)



三田 完 先生 講評

涅槃西風( ねはんにし)は涅槃会( 釈迦入滅の日とされる陰暦2月15日)のころに吹く季節風──と俳句歳時記にあります。肌寒さとともに、ほんのりと春を感じさせる風とともに思い出すくぎ煮の味──まさに俳味横溢の一句といえるでしょう。



≪ エッセイ ≫「題名なし」 栗田 里沙 さん ( 兵庫県神戸市)



あれはまだ私が彼と付き合い始めた頃。彼が群馬にある実家にいかなごのくぎ煮を買って送っていると聞いた私は「 いかなごを買って炊いたら安く済むし、簡単に作れるよ。」と言った。何でも知ったかぶりをするのは私の悪い癖だ。この時も自分でくぎ煮を作ったこともないくせに、毎年大量にくぎ煮を作る母を見ているせいで、そんなことを言ってしまった。案の定、彼は私の言葉をしっかり覚えていて、次の年「 くぎ煮を作ろう!」と私に言った。一人暮らしの彼の家には小さな片手鍋しかなく、1キロのいかなごを2回に分けて炊いた。母にレシピを聞いて初めて作ったくぎ煮は思った以上に上出来で、彼は最後の一匹まで丁寧にパックに詰めた。その年私たちは婚約した。
  2人で彼の実家へ挨拶に行ったのは翌年の2月。ふとした話からいかなごのくぎ煮の話になった。彼のおばあさんが、彼の作ったくぎ煮がとてもおいしかったと目を細め、私はくぎ煮の季節が近づくとどのお店にもくぎ煮の材料が山積みに並ぶこと、家々からくぎ煮の甘辛い香りが漂うこと、ご近所同士でくぎ煮交換をすることなど、自分の知っているありったけのことをおばあさんに話した。おばあさんは「 そうかい、そうかい。」と何度も頷いた。帰りの新幹線で私は、今年はくぎ煮をいっぱい作っておばあさんに送ろうと思った。しかしその翌日、おばあさんは倒れ、帰らぬ人になってしまった。おばあさんの日記の最後のページには私のことが綴られていて、私は大きな声で泣いた。
  そんなわけで、私にとっていかなごのくぎ煮は一度しか会ったことのないおばあさんの思い出になった。あれから3年、おばあさんを今も大切に思っている人たちに届けるため、毎年20キロほどくぎ煮を炊く私の手元は慣れたものだ。このくぎ煮を食べて一人でも多くの人が一緒におばあさんのことを思い出してくれたらいい。背中におぶった幼い我が子に「 そうかい、そうかい。」と声をかけながら、私は今日もくぎ煮を作る。



三田 完 先生 講評

彼と一緒にはじめて炊いたくぎ煮。それを、美味しいと褒めてくれた彼の祖母。手作りのくぎ煮が、人と人のえにしを結びました。ほのぼのといい気分で読むことのできる秀作です。




≪ エッセイ ≫「幸せの匂い」 村上 昌子 さん( 神戸市長田区)

まだ暗いうちから 赤や緑の旗を立てたたくさんの船が沖へと出て行く。
僕は港でそれを見送る。 また今年も この季節がやって来た。
この船のおじさんたちは帰ってきても いつもみたいにおやつはくれない。
わかっているから僕もおねだりはしない。でも仕事が終わるときっとまた頭をなでてくれる。
空から黒い奴が物欲しそうにじっと見ている。
僕はおじさんたちを守るように そいつを睨みつけてやる。
おじさんたちはあっという間に獲物を船から上げて 素早くどこかへ運んでいく。
車がいっぱい走っている通りの向こうに住む友達が言っていた。
お魚屋さんでおばさんたちが並んで待っているんだって。
僕はそんなに遠くへ行ったことがないので知らない。
僕は海の近くに住んでいる。 いつからなのかわからないけど多分この海の近くで生まれたんだと思う。時々 散歩に来た意地悪な奴に追いかけられることもあるけれどここがいい。

やがて あっちこっちから風に乗っていつもの匂いがしてくる。
潮の香りも好きだけど この匂いはもっと好きだ。ぼくは毎日 この匂いにうっとりしていつのまにか心地よい眠りに就いてしまう。でも それが何の匂いなのかは知らない。
 ある日 くたびれた様子の警備員のお爺さんが海辺に腰掛けてお弁当を食べていた。
こんなに歳をとっていて背中も丸くてシワもいっぱいなのに まだ働いているなんて可愛そうだなと僕は思った。
お爺さんが 僕に気づいてお弁当のおかずを少し分けてくれた。
それは 初めて食べたものだった。  甘くて 辛くて そしてあの匂いがした。
お爺さんは可愛そうなんかじゃなかった。きっと幸せなんだと思う。
だってこれは幸せの匂いなんだから。
お爺さんは優しい目をして笑った。昔 僕にシロって名前を付けてくれたのも そんな目をしたお爺さんだったことを思い出した。
今年も この匂いといっしょに僕の大好きな春の足音が聞こえてくる。
そして神社の大きな木にはもうすぐ僕の手のひらと同じ色の花がいっぱい咲く。



三田 完 先生 講評

シロという犬が眺める漁港の風景、そして、くぎ煮の香り……。磨かれた言葉でつづられた意欲作です。短い文章でありながら、一篇の短編小説を読むような豊かな印象でした。



≪ 短歌 ≫「 小包の 隅にくぎ煮の 瓶二つ 心の隙間 埋めた故郷 」 
               かすみ草 さん ( 広島県廿日市)



三田 完 先生 講評

近年は「 ゆうパック」といいますが、「 小包」という言葉に懐かしき時代の詩情を感じます。あれやこれやの品が詰められた段ボール箱の隅の空間を埋めるようにくぎ煮の瓶が……。荷物を詰めた人のさりげない思いやりに、作者ならずとも心が温もります。



いかなごのくぎ煮振興協会賞作品


≪ 川柳 ≫「 いかなごが 文化遺産に 煮込まれる 」 春爺 さん( 静岡県)



いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 山中 勧
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)選評

2013年、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたのは記憶に新しいところです。いかなごのくぎ煮も立派な和食の一部。ということは文化遺産でもあると思うとなんだか誇らしい気分になりますね。




≪ 川柳 ≫「 春くぎ煮 尾頭付きを 200匹 」
                中村 登志子 さん( 大阪府高槻市)



いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 
山中 勧( 株式会社伍魚福代表取締役社長)選評

春は入学、就職などお祝い事も多い季節。確かにそう言われると、いかなごのくぎ煮も立派な「 尾頭つき」です。数えたことのある方はいらっしゃるのでしょうか。




≪ 川柳 ≫「 ダメよダメ くぎ煮邪魔する ダイエット 」
                竹内 照美 さん( 広島県福山市)



いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 山中 勧
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)選評

皆さんご存知の2014年度の流行語大賞をモチーフにした作品。くぎ煮があるとごはんがすすみます。ダイエットはくぎ煮シーズンが終わってからですね。




(事務局より)

今年の応募総数1114作品のうち、740作品が川柳部門でした。
川柳愛好家の皆さんの広がりを感じます。
今回は、その中からそのまま「 いかなごのくぎ煮」の販売促進にも使えそうな3つの作品を「 いかなごのくぎ煮振興協会賞」に選定させていただきました。