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>第5回いかなごのくぎ煮文学賞 入選作品発表



第五回 いかなごのくぎ煮文学賞 グランプリ作品



≪短歌≫ 「 くぎ煮炊く 母との会話 味わって 顔知らぬ祖母へ 想いをはせる 」

               川野沙綺 さん  高1 ( 神戸市垂水区)



三田 完 先生 講評

くぎ煮を炊く香りを鼻孔で味わいながら、作者はくぎ煮を炊くお母さんとの会話も耳で味わっています。会話の内容は、くぎ煮の炊き方を教えてくれたお祖母ちゃんのこと。この会話のおかげで、炊き上がったくぎ煮の味がふっくらと豊かになります。味がそれぞれの家庭で受け継がれていく−そのことについて書いた投稿は毎年たくさんあります。この短歌もそうした一篇なのですが、未知の祖母に寄せる孫の思いが、くぎ煮の味わいを数段引き立ててくれました。


準グランプリ作品



≪川柳≫「 爆買いを くぎ煮でしてる 母が好き 」

               竹内照美 さん  60歳 (広島県福山市)



三田 完 先生 講評

このごろ話題となる海外からの観光客の「爆買い」。しかし、いかなごの爆買いは、阪神淡路地域で長年つづいている春の風物詩です。親戚へ、そしてお世話になった方々へ、春の歓びを分かち合う伝統の習いが、昨今の風俗とみごとに重なりました。さらに、お母さんへの愛情が一味加わっています。


郵便局賞作品



≪俳句≫「 春便り 故郷の母の くぎ煮待つ 」

               磯崎章 さん  88歳 (神奈川県松田町)



三田 完 先生 講評

まことに素直な、なんの衒(てら)いもない一句です。それだけに、何度か口ずさんでみると、すんなりと記憶に残ります。くぎ煮という食物のコピーとして秀逸と思いました。郵便局賞に輝く作品ですから、当然、お母さんからのくぎ煮はゆうパックで届くのでしょうね。


各部門特選作品



≪ 俳句 ≫ 「 いかなごを ふくふく育てる 春の波 」

               マコッチャン さん  58歳 (神戸市西区)



三田 完 先生 講評

「ふくふく育てる」が、瀬戸内の海の豊かさをみごとに伝えてくれます。春風駘蕩の海原を詠んだ句なのに、口の中にはくぎ煮の味が沸きあがる−まさしくくぎ煮文芸の神髄といえるでしょう。



≪ 川柳 ≫ 「 胃袋に いかなご丸が トライ決め 」

               松永智文 さん  33歳 (愛知県清須市)



三田 完 先生 講評

今年は川柳部門にラグビーの五郎丸選手に関するものが多数寄せられました。その中でもっとも鮮やかな印象を受けたのがこの句です。胃袋にみごとにトライを決めるのですから、山椒の辛味がちょっと強めのくぎ煮かもしれませんね。



≪ 短歌 ≫
「春暁(しゅんぎょう)の 海に漁火 煌(きら)めきて 茅渟(ちぬ)の浦曲(うらわ)に ●子(いかなご)のくる」

               大濱義弘 さん  72歳 (神戸市垂水区)


※ ●は魚へんに白


三田 完 先生 講評

さながら万葉の一首のような風格を持つ作品です。「茅渟」は大阪府南部の古称で、黒鯛のことを「チヌ」と呼ぶのも、この地名にちなんだものととか。「浦曲」は入江のこと。こうした古語をすんなりと用いた技量に感服しました。




≪ エッセイ ≫「くぎ煮賛歌」 村松啓子 さん  66歳 (浜松市浜北区)


 「そんなもん誰が食べるの」と長女が怒るように言う。次女も「いらん」とピシャリ。せっかくもらったお土産に、家族の反応はすこぶる悪い。残るは夫と母。「嫌いではないが、あえて食おうとは思わんが…」と、夫もこれまた消極的。母が見兼ねて「わしが全部食べるからよこしな」と救いの手を差し伸べてきた。
こうも嫌われてしまったものとは、大阪堺市に住む夫の姉が、わざわざ買って送ってくれたいかなごのくぎ煮。ここら辺りでは、小女子と呼んでいる。もう十五年も昔のことで、笑い話になっている。
冷蔵庫で二週間も過ぎた頃、余りにももったいないと刻んだねぎと合わせて卵焼きを作ってみた。くぎ煮の甘さが卵に移って、思いの外美味しい。冷めてもいける。
もしかしたらとある日、次女のお弁当に入れてみた。返って来た弁当箱は、綺麗に洗われ、仰天。ずっこけた。捨てられた様子もなし。「人間、背に腹は変えられないとみえて、嫌でもくぎ煮を食べんとおかずが無かったでしょうが」と私。次女いわく「うまいもんはうまいと素直に認めて食べないと、仕事に差し支えますからと」。憎たらしい。
調子に乗って人参、油揚げ等と一緒に入れた炊込み御飯も作ってみると、これも好評で、夫も母もそ知らぬ顔で、お代りをしてきた。佃煮は年寄が食べるものだと言った長女もお食らいになった。図図しい家族だ。
そして今、娘らは結婚して母になり、困った時のお助け献立として定着している。私に変って次女が同じように、くぎ煮の卵焼きを作り、孫にせがまれて具材も増えたくぎ煮の炊込みご飯も好評だ。
いかなごのくぎ煮は、春を告げる我が家の風物詩でもあるのだ。



三田 完 先生 講評

家族みんなが見向きもしなかった到来物のくぎ煮。それが、あるきっかけで…。短い文章の中にドラマを感じました。さらに、くぎ煮を活用したレシピにもなっている、内容豊かなエッセイです。



≪ 詩 ≫「 春のキック 」 双喜文 さん   (神戸市長田区)


板宿の商店街の魚屋さんに、
珍しく人が並んでる。

いかなごのくぎ煮作りに、
情熱を燃やす猛者なおばちゃんらの面構え。

神戸に来て、はや三年。
やっと、くぎ煮作りに、初挑戦。

行列の最後尾に並んでは、
ひとり、通りに背を向ける。

自転車で五分も行くと、海があり、
ホッとする自分を発見したのも
来たばかりの三年前−。

お腹が動く。
四月初めが出産予定日。

春のキック。また、キック。

「あっ」という間に、
春の猛者たちに、包まれている。



三田 完 先生 講評

出産を控え、お腹のなかで母胎をキックする赤ちゃんに感じる春。そして、いかなごを買うために魚屋さんに猛者たちが並ぶ風景からも、作者は春のキックを感じています。躍動の春、歓びの春、期待の春−やがて生まれる赤ちゃんも、将来はくぎ煮のファンになることでしょう。



ジュニア部門作品



≪ グランプリ短歌 ≫
「 鼈甲(べっこう)の ごとききらめき いかなごは 海より我の ごはんの上へ 」

               篠原小雪 さん  高2 (兵庫県加古川市)



三田 完 先生 講評

恵みの海から食卓へとはるばるやってきたいかなごを愛(いと)しむ、作者の思いが感じられる一首です。「鼈甲のごとききらめき」という宝石のような表現に、これから胃の腑に収まるいかなごも本望なのではないでしょうか。



≪ 俳句特選 ≫ 「 春を告ぐ ほのかに香る いかなごよ 」

               さりい さん  高2 (神戸市長田区)



三田 完 先生 講評

温かいご飯の上にくぎ煮を載せたとき、ほのかに香りがたちのぼる。その淡い香りに春を実感する…。これこそ、まさに俳句−日々の暮しのなにげない一瞬に季節を感じ取ることです。



≪ 短歌特選 ≫「卵かけ ごはんの金の 海の中 くぎ煮の群れを 泳がせている」

               奥野華穂 さん  高2 (兵庫県加古川市)



三田 完 先生 講評

生卵とくぎ煮の相性に、ゴクリと唾が湧いてきます。ご飯茶碗の中を海に見立てた発想が楽しいですね。




≪ 俳句佳作 ≫「いかなごの あじを決めたり 祖母の愛」 

               高田絢菜 さん  中2 (神戸市長田区)



三田 完 先生 講評

お祖母ちゃんの愛情あればこそ、くぎ煮の味も格別のものになる−作者の素直な実感だと思います。ただし、「愛」という言葉がいかにも抽象的で、風景がぼやけてしまうのが玉にきず。俳句は写生の文芸です。たとえばラストの5文字を「祖母の笑み」と、目に見える風景にしてみてはどうでしょうか。


いかなごのくぎ煮振興協会賞作品


≪ 川柳 ≫「 くぎ煮好き 神戸出張 立候補 」

               ありゃま さん  43歳 (東京都品川区)



山中 勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 選評
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)

春には、神戸のお土産店にも「くぎ煮」がたくさん並びます。くぎ煮好きなビジネスマンの方、どんどん神戸に出張を(笑)!。全国各地に持ち帰っていただき、たくさんの方に味わっていただきたいですね。




≪ 川柳 ≫「 ただいまと くぎ煮のにおう パパの声 」

               横溝麻志穂 さん  小5 (仙台市青葉区)



山中 勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 選評
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)

お父さんが「くぎ煮」をお土産に買ってきたのでしょうか。ひょっとすると「くぎ煮」を炊く仕事をされているのでしょうか。「母の味」「おばあちゃんの味」という作品が多い中、パパを登場させてくれたということが、くぎ煮を作って売る仕事をしている一人の男性としてとてもうれしいです(笑)。




≪ 川柳 ≫「 春くぎ煮 今年は値段 張るくぎ煮 」

               横井貴志 さん  25歳 (神戸市長田区)



山中 勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 選評
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)

いかなご漁の不漁により、今年の解禁日初日の生のいかなご店頭価格は1キロ2500円前後。昨年よりも1000円程度高く、心待ちにしていた地元の皆さんからはため息が漏れていました。以前から「いかなご貯金」という言葉がありましたが、今年は「いかなご貧乏」という言葉がちらほら聞かれるようになりました。




≪ 俳句 ≫「 いかなごに 淡い恋情 寄せる春 」

               三浦有央 さん  中2 (神戸市長田区)



山中 勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 選評
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)

いかなごへの思いを恋心に例えたところが中学生らしいですね。この時期になると、いかなご愛、くぎ煮愛の強烈な方をたくさん見かけます。「淡い恋情」ではなく「熱愛」ですね(笑)。偏愛、溺愛など、さまざまな愛の形がありそうです。地域の皆さんだけでなく、日本中で愛されるようになりたいです。




≪ 俳句 ≫「 三月の 阪急電車の くぎ煮色 」

               山ア大輔 さん  高1 (埼玉県所沢市)



山中 勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 選評
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)

斬新な視点。地元にお住まいの皆さんなら、あーなるほど、と思う作品です。阪急電車のえんじ色は正式には「マルーン色」と呼びます。明治43年から使われているそうですが、「くぎ煮」もこれに負けないくらい歴史と伝統のある食文化です。家庭やお店によってさまざまな「くぎ煮色」がありますが、我が家のくぎ煮は阪急電車に似ています。




≪ エッセイ ≫「 母の味 」 北谷萌 さん  22歳 (埼玉県蕨市)


湯気の立つ白いご飯に、冷蔵庫で寝かせた冷たいくぎ煮。噛みしめるとほのかに香る柚子の風味は、私の一番好きな母の味だ。兵庫から出て四年。まだ寒いこの時期に、毎年送られてくる小包みと、短い手紙。「ちゃんと食べて、元気に暮らしなさい」。メールや電話はよくしているが、私はやはり、手紙が一番好きだ。昔から変わらない、やわらかくて凛とした母の字。その、たった一文が、私に帰る場所を示してくれる。
新しい手紙を財布に入れ、前の手紙を小さな箱の中にしまう。さみしくなったとき、しんどくなったとき、いつでも見られるように。手紙を入れ替えたら、ご飯を炊く。この時間がなんとももどかしい。いつもはこの間におかずを作るのだが、今日はその必要もない。くぎ煮の絶妙な甘辛さは、他のおかずに手を伸ばすことさえ忘れさせてしまうからだ。
炊きたてのごはんをよそい、くぎ煮を乗せる。白い湯気の中で、艶やかな茶色がより一層食欲を掻き立てる。口に入れると、生姜と柚子の香りがいっぱいに広がり、お米の甘さとくぎ煮の甘辛さは、噛めば噛むほどに味わいを増していく。嗚呼、何たる至福。おにぎり、お茶漬け、くぎ煮入り玉子焼きと、毎日少しづつ消費していく。
袋いっぱいに送られてくるので、食べきれるか不安になるのだが、それは毎年杞憂に終わる。最後はいつも残りを惜しみながら、くぎ煮の袋にご飯を入れ、うまみのぎゅっと詰まったおにぎりに、軽く炙った焼きのりを巻いて食べる。これがまた格別に美味しい。
そうして、年に一度のごちそう月間は終焉を迎える。母の味が手元になくなってしまうのは、やはり少し心細い。来年は、炊きたてのあたたかいくぎ煮でも食べに帰ろうか。



山中 勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長 選評
( 株式会社伍魚福代表取締役社長)

くぎ煮とともにお母さんから送られてくる、「ちゃんと食べて…」という短い手紙。その手紙を大切に財布にしまう離れて暮らす娘さん。思わずほろりとさせられました。それぞれの家庭にそれぞれの母の味があります。離れて暮らす家族のために、いったい何人のお母さんが「くぎ煮」を炊いているのでしょう。




(事務局より)

今年で第5回目を迎えた文学賞。今年は過去最多の1410作品が全国43都道府県から寄せられました。いかなご漁の大不漁で今年、事務局周辺では本当の悲鳴が聞かれましたが(汗)、こちらはうれしい悲鳴。全ての作品をひとつひとつ楽しく読ませていただきました。たくさんのご応募に感謝です。また来年もよろしくお願いいたします。