第11回 いかなごのくぎ煮文学賞入賞作品

グランプリ
川柳:晩酌を 持続可能に するくぎ煮 天和 さん(群馬県・男性・64歳)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
川柳は世相を映す鏡ということで、今年はSDGsにまつわる作品が多数寄せられました。持続可能なものが「くぎ煮」ではなく「晩酌」と一捻りした結果、着地がピタリと決まりました。コピーとしても秀作。
準グランプリ
俳句:瀬戸内のをとめ釘煮と花洛へと 柿司 さん(京都府・男性・41歳)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
瀬戸内の女性がくぎ煮とともに花盛りの京都へ嫁いでいく…という一句です。「花洛」という美しい季語の選択がおみごと。
準グランプリ
短歌:嘘つきは針千本と子に教え釘煮を食べる4月1日 れむ さん(熊本県・女性・42歳)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
待ちに待ったくぎ煮を食べたのがエイプリルフールだったとは(笑)。「針千本」と「くぎ煮」を重ね、とぼけた味わいに。
郵便局賞
エッセイ:ありがとうの味 感王寺美智子 さん(福岡県・女性・61歳)
 東日本大震災の後、私が暮らしていた気仙沼の仮設住宅には、全国からたくさんの人たちがボランティアに来てくださった。
 ある時、神戸から来た人たちが、皆に小さな贈り物を配ってくれた。
「なんだべや?」
 小魚の佃煮のようだ。
「ああ、おら、知ってるだ。えーと、えーと……」
 石巻のおばあちゃんがニコニコッとして、何か思い出そうとしている。
「ああ、そんだ、い、が、いがなご、いがなごのくぎ煮、っつんだべ! だべ?」
 得意げに言った。おばあちゃんがまだ避難所にいた時、同じく神戸から来たボランティアさんが持って来てくれたのだそうだ。
「これで作ったおにぎりのうんめかったこと。おら、忘れねえ。ありがとう、ありがとうございます」
 おばあちゃんはくぎ煮の袋を拝むように手に包み、目を潤ませた。それからボランティアさんの手をとり、ギュッと握った。
「私たちも神戸の地震の時、全国の人たちから助けてもらったのです。東北の人たちも沢山来てくれました。大きな鍋で芋煮を作ってくれました。あのあったかな味、忘れません。おばあちゃん、こちらこそ、ありがとうございました」
 神戸と気仙沼。遠く離れているけれど、どちらの人たちも冬の寒い避難所で、凍えきった身体と心を芯から温めてくれた炊き出しの味を知っている。
 その夜、私たちはいかなごのくぎ煮のおにぎりと芋煮を作って一緒に食べた。
「おいしいとぉ」
「うんめえなあ」
 私たちは生涯忘れることのできない感謝の味を知っている。
〈三田完・特別審査委員長講評〉
ともに震災に見舞われた気仙沼と神戸。二つの町の人々の気持が、くぎ煮の味で通い合いました。避難所の寒さを知る作者だから書けた心温まる一文です。
特選(俳句)
俳句:くぎ煮炊く余生の贅や春廚 うみなり さん(新潟県・女性・69歳)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
「余生の贅」という言葉が胸に沁みます。くぎ煮への作者の思いがしみじみと伝わってくる、当文学賞ならではの秀句ではないでしょうか。
特選(短歌)
短歌:菜箸でくぎ煮を摘まむ母の手は左手だったとくぎ煮を供ふ もふもふ さん(千葉県・男性・59歳)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
くぎ煮を作ってくれた亡き祖母や母への思いが毎年たくさん寄せられます。この作者が詠ったのは、菜箸を使う母の左手。ただそれだけのこととはいえ、鮮烈な記憶に心打たれます。
特選(川柳)
川柳:願い込め美味しゅうなあれくぎ煮煮る ミント さん(静岡県・女性・58歳)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
あんこもくぎ煮も「美味しゅうなあれ」で極上の味に。「煮」という漢字を重ねずに「くぎ煮炊く」とすれば、字面がもっとよくなったのでは。
特選(詩)
詩:ダンスな春 興村俊郎 さん(大阪府・男性・73歳)
ふと思いだす
春一番が吹きはじめるころ
波をまねして
からだをひねる
いかなご

風も雨もあたたかになって
海からやってくる
ダンスな春
花もこころも
つぼみをひらく

とけだした
寒さに凍っていた気分
快活な季節のはじまり
ふと思いだす
いかなご
〈三田完・特別審査委員長講評〉
いかなごの季節の躍動感がみごとです。「春のダンス」ではなく「ダンスな春」として、まずタイトルが弾みました。

特選(エッセイ)
エッセイ:いかなごのくぎ煮の声 山本順子 さん(大阪府・女性・48歳)
「やれやれ、ようやく食いよったか。甘いやろう、美味しいやろう…」
 ため息交じりにくぎ煮にそう言われたのは、私が四十六歳の春だった。私は神戸港町に生まれながら、その日までいかなごのくぎ煮を口にしたことはなかったのだ。
 私の家は母子家庭で、母は休みなく働き、私を育ててくれた。そんな母に手料理をねだるなど決してできなかった。
 そんな私がくぎ煮と初めて出会ったのは、小学一年生の春の遠足だった。ご飯の上にちりばめられたり、おにぎりになったり、嬉しそうなくぎ煮達を友達の弁当箱の中に見つけた。
「おばあちゃんが作ってくれたの」
「ママが先週作ってくれたんだ」
 友達は両手に持った弁当箱を嬉しそうに先生に見せていた。先生は、
「愛情たっぷりのくぎ煮やね」
と微笑んだ。ひねくれた私はくぎ煮から目をそらし、自分で作ってきた梅おにぎりを無表情にほおばった。
 中学生になっても、結婚しても、私がくぎ煮と目を合わせることはなかった。
 やがて私は中学生の娘を持つ母となった。ある春の日、スーパーマーケットで、
「これ買っていい?」
 生のいかなごを指さしながら娘が言った。家庭科の授業でくぎ煮の存在を知ったのだ。
「作り方、知らんよ」
 そう言って、その場を離れようとした私の腕をつかみ、料理好きの娘は、
「私が作るから!」
と、半ば強引にいかなごをかごに入れた。
 家に帰ると、娘はスマホを頼りに一生懸命にくぎ煮を作り始めた。いい歳をして、まだくぎ煮に意地を張ったままの私は一切手伝わなかった。夕方になり、
「出来たよ!」
 弾んだ声の娘が、私の前に小さなお皿にのったくぎ煮をポンと置いた。それは昔、友達の弁当箱に入っていたくぎ煮よりかなり薄い色だった。
 私は生まれて初めてくぎ煮を口に入れた。娘の愛情たっぷりのくぎ煮の優しい甘さが、うつむいていた幼き日の私の頭を優しくなでた。何も知らない娘に、私は涙を隠しながら、
「おいしい」
と小さな声で言った。くぎ煮の声はもう聞こえない。
来年は娘と一緒にくぎ煮を作ろう。
今までの分も、いっぱい、いっぱい食べよう。
〈三田完・特別審査委員長講評〉
くぎ煮は母の味という作品は数々あります。しかし、これはお嬢さんによってくぎ煮へと導かれた母親がつづったユニークな文章。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
俳句:母親の錬金術や釘煮煮る 夏凱 様(京都府・男性・36歳)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
いかなごを炊いてくぎ煮に。不漁で値段が高くなり、「錬金術」と呼ぶにふさわしい高級食材になりました。各家庭での錬金術、今後も続けられるよう、資源保護との両立を続けなければなりません。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
川柳:春が来た くぎ煮を食べよう eat! come! now go! ネイビーズアフロみながわ さん(大阪府・男性)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
神戸大学出身の漫才コンビ「ネイビーズアフロ」のみながわさんが3月、「くぎ煮」のテレビ取材の際に作った作品です。「eat! come! now go!」は「イカナゴー!」と読みます。私も振興協会事務局長として何度も「イカナゴー!」と叫びました(笑)
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
川柳:イカナゴの 予約代わりに 年賀状 蹴りたいお腹 さん(奈良県・男性・62歳)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
年賀状に「今年もくぎ煮楽しみにしています」と書かれていたら。頑張って炊いて送らねば…という気持ちになりますね。そういう年賀状のやりとり、あちらこちらでありそうです。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
川柳:テレワークそわそわさせるくぎ煮香 俳諧オジサン さん(神奈川県・男性・39歳)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
コロナ禍でテレワークが日常になりました。家での仕事中にくぎ煮を炊く甘辛い匂いが漂ってきたら…。炊き立てのご飯にくぎ煮を載せて、おやつにするしかありませんね(笑)
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
短歌:実さんしょうは父ちゃんの皿に入れてたらイカナゴ入れてと父ちゃんが言う 横道玄 さん(山口県・男性・小5)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
ジュニア部門(現小学6年生)の作品。まだ実山椒は苦手なんですね。ご家庭での微笑ましいやりとりが目に浮かびます。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
短歌:田舎から届く大きな宅急便こっちで買えるよくぎ煮を除き 伊藤一男 さん(埼玉県・男性・74歳)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
食べるものをあれもこれも、たくさん送りたくなる母親の気持ち。お手製のくぎ煮とともにありがたく受け止めたいですね。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
短歌:弁当の蓋はくぎ煮の天敵で白米の中そっと泳がす 服部明日檜 さん(東京都・女性・55歳)
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
お弁当あるあるですね。フタがくぎ煮の「天敵」。天敵から救助してごはんの海で泳がせてあげなければ…。結局は食べるんですが(笑)
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
エッセイ:いかなごのくぎ煮 くぎ煮ガール さん(大阪府・女性・27歳)
いきなりですけどね うちのオカンがね 好きな魚料理があるらしいんやけど
その名前をちょっと忘れたらしくてね
でまあ色々聞くんやけどな 全然分からへんねんな
分からへんの? ほな オカンの好きな魚料理 ちょっと一緒に考えてあげるから どんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ
あのー 醤油、砂糖、みりん、生姜などで小さい魚を甘辛く味付けした佃煮やって言うねんな
おー いかなごのくぎ煮やないかい その特徴はもう完全にいかなごのくぎ煮やがな
いかなごのくぎ煮なぁー
すぐ分かったやん こんなんもー
でもこれちょっと分からへんのや
何が分からへんのよー
いや私もいかなごのくぎ煮と思うてんけどな
オカンが言うには 見た目が鮮やかで 食べる前につい写真撮りたくなる言うねんな
あー ほないかなごのくぎ煮と違うかぁ いかなごのくぎ煮が写真映えすることないもんね
いかなごのくぎ煮はね 茶色くさびて曲がった古釘に似ていることろから「くぎ煮」と呼ばれるようになったくらい とにかく見た目は地味やねんから
そやねんな
ほないかなごのくぎ煮とちゃうがなこれ
あれほなもう一度詳しく教えてくれる?
キロ単位で魚を買うてきて 一度に大量に作るらしいねん
いかなごのくぎ煮やないかい いかなごのくぎ煮を少量だけ作る人見たことないからね 大量に作ってタッパーに入れて、いろんな人におすそ分けするのが定番やねんから 一人暮らし始めたときに実家からクール便届いたら だいたいタッパーに入った大量のいかなごのくぎ煮やねんから
分からへんねんでも
何が分からへんのこれで
私もいかなごのくぎ煮や思うてんけどな
オカンが言うには 運動会に持っていくおにぎりの具の定番らしいねん
ほないかなごのくぎ煮ちゃうやないかい いかなごのくぎ煮は桜に並ぶ春を代表する風物詩やからね 運動会言うたら季節は秋やねんから 運動会にいかなごのくぎ煮は持って行かれへんのよ
私もそう思ってんけどな オトンが言うにはな
オトン?
最近運動会を五月に行う学校が増えてきてるらしいねん
あーほな冷蔵保管してたら持っていけるんか
あーホンマに分からへんがなこれ どうなってんねん
もうええわー ありがとうございましたー
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
2019年Mー1グランプリの「ミルクボーイ」の内海さんは姫路出身。ということはくぎ煮もよくご存知のはず。姫路の観光PRにも協力されているので、このネタ演ってもらえないでしょうか。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
エッセイ:ばあちゃんと、くぎ煮 ハテシマサツキ さん(兵庫県・男性・23歳)
 恥ずかしい話だが、兵庫県に引っ越ししてくるまで、「いかなごのくぎ煮」は鹿児島の郷土料理だと思っていた。思えば、この誤解は幼少期から続いていたような気がする。
 小学生の頃、春休みの楽しみといえば、鹿児島の離島に住む祖母の元へ遊びに行くことだった。春の陽を浴びて光る海も、吹き抜ける春風に揺れる山々も、都市で育った私の目には、すべてが非日常に映った。
 遊び疲れたら、大きな座卓で親戚揃って夕食をとる。食卓に並ぶのは、わらびの酢漬けや鰆の塩焼き、そしていかなごのくぎ煮。甘辛くて、ごはんによく合う、くせになる味。当時の私は何も考えず、パクパク食べていたものだ。
 しかし、最近ふと、「かごしまのばあちゃんち」で何故いかなごのくぎ煮が出されたのか、不思議に思うことがあった。数ヶ月、声を聞けていなかったこともあり、私は携帯電話を手にした。「はーい」と電話に出る癖も、その声もまったく変わっていなかった。
 私の祖母は今も鹿児島に住んでいるが、亡き祖父との結婚生活のうち、十五年は神戸で過ごしていたらしい。くぎ煮の話を持ち出すと、「いろんなところから食べきれないくらいもらったねぇ」と、懐かしそうに声をあげた。
 ここからは私が思うに、だが。神戸は祖母にとって大切な記憶が詰まった街だ。鹿児島出身の祖母がはじめて住んだ都会でもあり、私の母や叔母を育てた場所でもある。きっと路地ひとつにも思い出が残る。家族揃って中華街を歩いたことも、不慮の事故で身体が動かせなくなってしまった祖父を懸命に支えた日々も、そのすべてが祖母にとっては神戸そのものだ。
 五感の中でも、においや味はずっと記憶に残り続けるという。私がいかなごのくぎ煮を口にすると、祖母の元で過ごした春休みの記憶がよみがえる。祖母もくぎ煮を噛みしめながら、神戸での日々を思い返していたのかもしれない。
 電話を切ると、無性にあの甘辛さが恋しくなって、私はスプリングコートを羽織った。
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
神戸には鹿児島や沖縄出身の方が結構おられます。そんなお祖母様の神戸でのご縁がつながり、鹿児島の離島での「くぎ煮」の思い出になっています。お祖父様の怪我がなければ、今も神戸に住んでおられたかもしれませんね。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
エッセイ:卒業宣言 ゆきんこ さん(東京都・女性・37歳)
 春、といえば、胸が躍る「入学式」。そして、切なさで胸が騒ぐ「卒業式」が入り混じる季節。学生生活を終えて数十年。今年、まさか胸が騒つく春を迎えることになるなんて、全く予想していなかった。
 そう、それは突然起こったのだ。叔母からの「いかなご作りは今年で卒業します」という宣言によって。
 毎年、当たり前のように届く叔母のいかなごを味わいながら、春を迎える喜びをかみしめていたのに。まさかの卒業とのこと。来年からは私に春が訪れないような、そんな気分になってとても寂しい気持ちになった。
 思えば、神戸を離れて14年…。日々生活をしていると、なかなか故郷に思いを馳せることはないけれど、毎年叔母から届くいかなごは、私を故郷へ連れ戻してくれる、そんな特別な食べ物だった。
 ホカホカご飯にのっけると、醬油とショウガの香りがふわりと漂い、その香りを嗅いでいると、まるでタイムマシーンに乗ったかのように故郷の情景が思い浮かぶ。小学校の帰り道、各家々から香る甘じょっぱい匂いに、春が近づいているのを感じた。家に着くと、大人たちが大鍋に数キロのいかなごを入れ、焦げ付かないよう気を付けながら、何度も煮立たせる工程が目に入り、その研ぎ澄まされた姿を眩しく感じていた。 そう、いかなごは私をいつでも「お帰り」と迎えてくれる、そんな温かな存在だったのだ。
 そのぬくもりが今年で終わりだなんて…。でも嘆いている場合ではない。今すぐ叔母に作り方を伝授してもらわなければ!今年卒業を迎える叔母といなかご作りに入学する私。
 来年は私から叔母へ春を届けよう。いかなごバトンを受け継いで、今度は私が誰か温かく迎えてあげられるように。
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
くぎ煮を「卒業」という言葉も残念ですが、よく耳にするようになりました。こちらはそれを受けて新しく「入学」の決意をされたお話です。叔母さまから伝授されての「くぎ煮」のバトンリレー、末長く続けられるようにしたいです。
いかなごのくぎ煮
振興協会賞
詩:ほかほか効果は無限大 アルペジオ さん(愛知県・女性・45歳)
ほかほかご飯 いかなごはくぎ煮
生姜の効果で いっそうほかほか
食べれば納得 美味しさほっこり
笑顔にっこり たっぷり食べたい
おかわりしたい
神戸の銘品いかなごくぎ煮
〈山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長(株式会社伍魚福社長)選評〉
今年の「くぎ煮コンテスト」の「伍魚福賞」はしょうが多めの作品でした。生姜の「ほかほか効果」確かにありそうですね。そのままPOPにして売り場で使えそうな作品です。

ジュニア部門

グランプリ
短歌:祖父の船いかなご求め波を切り祖母は醤油と砂糖揃える 宗實杏寿加 さん(兵庫県・女性・高2)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
いかなご漁に出る祖父、そして、厨でくぎ煮作りの準備をする祖母。よくある風景なのでしょうが、「波を切り」の格調と「醤油と砂糖」の日常が、面白いコントラストを醸しています。
準グランプリ
俳句:いかなごや小皿一つに箸二つ 井上和奏 さん(大阪府・女性・12)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
写生に徹した、小学生らしからぬ大人びた句境に感心しました。「箸二つ」が2本なのか2膳なのか、少々悩ましいのですが、私は2膳と解釈して食卓の風景をあれこれ想像しました。
特選
短歌:朝食に くぎにたべると 思い出す 2年も祖母と 会えないことを 諸田和真 さん(神奈川県・男性・小4)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
コロナ禍ならではの一首。しみじみとさせられます。せめてお祖母ちゃんと電話でたくさん話してください。


特選
川柳:祖母作る くぎ煮を祖父が 自慢する 春のめざめ さん(北海道・女性・高2)
〈三田完・特別審査委員長講評〉
自分じゃ何も手伝わないで、わが家のくぎ煮をみんなに自慢してばかり─。そんな祖父を、女子高生の作者はちょっと可愛く感じているのでは?
特選
詩:輪環と釘 中川そぞろ さん(広島県・女性・高2)
春、たまごに全てを託し、
夏、砂に抱かれて眠り、
冬、力強く潮へ飛び込む。
ちいさな魚の躍動。
セメント砂に故郷追われ、
なおも煌めく海の恵みよ。

朝、市場に頭がならぶ。
昼、厨でみりんを愛す。
夜、食卓の湯気ゆたかに、
ときに頬さす尾びれの棘を、
舌でころがる甘みの砂を、
際限なく愛したいと思う。
〈三田完・特別審査委員長講評〉
いかなごへの愛に充ちた讃歌です。小さな小さな魚でも、たかがくぎ煮というなかれ、という気分に読者をいざいます。

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© 2007- いかなごのくぎ煮振興協会