第7回 いかなごのくぎ煮文学賞入賞作品
【三田完・特別審査委員長総評】
今回の投稿総数は各部門合わせて計3170篇。昨年を1000篇も上回り、事務局も私も嬉しい悲鳴をあげながらせっせと作品に眼を通しました。
とりわけ激戦だったのは川柳部門です。「そだねー」「忖度」「インスタ映え」といった話題を織り込んだ作品が続々と寄せられ、さらに、いかなごの高値や品薄といったマイナス要件をも笑い飛ばす逞しい作風が今年は眼を惹きました。
「転んでもただでは起きぬくぎ煮ファン」─私も拙い一句で作者の皆さんに敬意を表したいと思います。
昨年と較べ、格段に投稿数が増えたのがエッセイ部門です。量のみならずレベルも上がっています。くぎ煮への郷愁、くぎ煮を作る家族への思いに加え、作者ご自身の挫折、失意のエピソードを重ねた深みのある作品が揃いました。
そして、今回グランプリに輝いたのは、高校三年生ぱんちさんの短歌。短歌といえばみやびな抒情という固定観念を吹き飛ばす、ペンネームどおりパンチ力のある三十一文字に唸りました。
新たな輝きを放つ今年の作品群。さて、〈いかなごのくぎ煮文学賞〉が、今後どのように進化していくのか…?期待が膨らみます。
【事務局より(山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長)】
今年のいかなご漁の解禁は、昨年よりも9日早い2月26日。漁の状況は昨年よりも少し良かったのですが、価格はキロ3000円前後で高止まりしたままでした。
そんな中、「いかなごのくぎ煮文学賞」の応募作品は年々充実、過去最高の3170作品。たくさんのご応募誠にありがとうございました。
例年通りの楽しい作品だけでなく、今年は特に歴史的な価値のある証言も多く集まったように感じます。文化的、学術的な意義も高まりそうな「くぎ煮文学賞」。来年以降も実施予定です。
たくさんのご応募をお待ちしております。
- グランプリぱんちさん(栃木県・女性・高3) 短歌:さあ食べな 佃煮なんて 呼ばせねえ ご堪能あれ イカしたカーブ
- 準グランプリ瀬戸ピリカさん(神奈川県・女性・53) エッセイ:くぎ煮に泣いた
- 郵便局賞すみよさん(兵庫県・女性) 川柳:桐箱が 似合うくぎ煮で ございます
- 特選(俳句)堀川真生さん(千葉県・女性) 俳句:いかなごへやもめの伯父の落とし蓋
- 特選(短歌)ひだまり猫さん(大阪府・女性・46) 短歌:瀬戸内の 春の波間に ピチピチと プクプク煮詰めりゃ 茶の間ワクワク
- 特選(川柳)たかちゃんさん(埼玉県・男性) 川柳:不漁かい いかなごだって 反抗期
- 特選(詩)久保俊彦さん(京都府・男性) 詩:美味なるもの…
- 特選(エッセイ)オウンゴールさん(大阪府・男性・64) エッセイ:ちょっと違う味
ジュニア部門
- グランプリ横道玄さん(山口県・男性・小2) 短歌:青いうみから しょうゆのうみに ばしょをかえ おいしくなるよ いかなごたちは
- 特選りぼんさん(大阪府・女性・小3) 俳句:テーブルに 春風ふわり くぎ煮かな
- 特選八柄実穂さん(兵庫県・女性・高1) 短歌:いかなごの 匂いの群れが 泳いでる 魚となってゆく 帰り道
- 特選見澤悠月さん(埼玉県・男性・小1) 川柳:もういいかい 汁気とぶまで まあだだよ
- 特選秦まりなさん(和歌山県・女性・高1) 詩:食卓
- 特選なーちゃんさん(京都府・女性・高3) エッセイ:おばあちゃんのいかなご