第6回 いかなごのくぎ煮文学賞(2017年)入賞作品
【三田完・特別審査委員長総評】
この春はイカナゴが不漁で、キロ4000円の高値だったと聞きました。くぎ煮文芸にとっても大ピンチ─と思っていたところ、昨年を上回る応募作があり、たくさんの方々のくぎ煮に対する思いの深さを、あらためて感じました。高値へのささやかな抵抗を記したもの、あるいは「忖度」「恋ダンス」「EU離脱」といった時世を反映したもの、さらにはくぎ煮を通じての国際交流を綴ったものなど、作品の幅もいっそう広がった印象があります。高校生以下の世代の力作も多数寄せられ、頼もしいかぎり。来年は、瀬戸内の海がイカナゴをすくすくと育み、くぎ煮文学への感動や共感がさらにひろがることを願ってやみません。
【事務局より(山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長)】
昨年に引き続き、今年のいかなご漁は史上最悪の大不漁。解禁初日、店頭では1キロ3000円~4000円と史上最高値をつけました。今年は「くぎ煮」を炊けなかった、もらえなかったという悲喜こもごもの声が聞こえてきます。
そんな中、今年の「くぎ煮文学賞」は全国46都道府県から2155もの作品が集まりました。都道府県数、作品数ともに史上最高。「くぎ煮」についての熱い思いを文字化し、将来に伝える、という文化的な意義も感じています。 たくさんのご応募ありがとうございました。
- グランプリりのんぱさん(東京都・37) 川柳:くぎ煮以外 曲がったことは 嫌いです
- 準グランプリ西田由里子さん(大阪府・35) 短歌:あいうえお 習い始めた 一年生 くぎ煮並べて つ・く・しと書いた
- 郵便局賞佐藤茂男さん(福島県) エッセイ:福島のコウナゴ(イカナゴ)
- 特選(俳句)むらさき色布さん(神奈川県・29) 俳句:採れたての いかなごまさに 光の巣
- 特選(短歌)橘孔雀さん(福井県・52) 短歌:ひとりでも 大丈夫だと 言う母に くぎ煮持たされ また見送られ
- 特選(川柳)板垣光行さん(新潟県・58) 川柳:いかなごも キロの値段で 鯛に勝ち
- 特選(エッセイ)義田知子さん(ニュージーランド) エッセイ:春告魚
- 特選(詩)ふじたごうらこさん(岡山県) 詩:いかなごのうた
ジュニア部門
- グランプリてふてふさん(岐阜県・高2) エッセイ:おてつだい
- 特選黑沢侑夕さん(兵庫県・高2) 詩:優しさに包まれて
- 特選浅井菜々子さん(兵庫県・高3) 俳句:亡き祖母の 影を追いかけ 炊く くぎ煮
- 特選横溝惺哉さん(宮城県・小5) 川柳:くぎ煮食べ くぎがはずれて 笑顔の子
- 特選横道玄さん(山口県・6) 短歌:いかなごが みんなおじぎを しているよ 「いただきます」と ぼくもおじぎする