第8回 いかなごのくぎ煮文学賞(2019年)入賞作品
【三田完・特別審査委員長総評】
くぎ煮が告げる瀬戸内の穏やかな春─そんな思いとはうらはらに、くぎ煮ファンに厳しい風が吹いています。この数年いかなごの不漁がつづき、値段が高騰。くぎ煮文学賞の応募作品にも、そんな状況を反映したものが増えました。
とりわけ川柳部門には意欲作が多数寄せられ、難局をユーモアで乗り切る逞しさが伝わってきました。ジュニア部門にも力作が並び、心強いかぎりです。
元号は平成から令和へ─。来年は新たな時代にふさわしいくぎ煮文芸が登場することでしょう。楽しみです。
来春のいかなご豊漁を祈り、そして、兵庫県出身のあの方を偲びながら、私も拙い川柳を一句。
「ロケンロール少しくぎ煮の香りする」
【事務局より(山中勧・いかなごのくぎ煮振興協会事務局長)】
今年のいかなご漁は3月5日解禁。残念ながら過去最悪の不漁となり、大阪湾では史上最短の3日間で終漁となりました。価格もキロ4000円前後と史上最高でした。播磨灘では4月25日まで漁が続きましたが、地域の皆さんもいかなごの確保に苦労されたようです。
そんな中、「いかなごのくぎ煮文学賞」の応募作品は46都道府県から2671作品。全国からたくさんのご応募、誠にありがとうございました。
「くぎ煮」に対する熱い思いが様々な形になった作品。事務局も楽しく読ませていただきました。
来年は「いかなご漁」が豊漁でありますように。
- グランプリやじろべーさん(千葉県・男性・53) 川柳:オレオレは くぎ煮送れで 本物と
- 準グランプリこまゆみさん(埼玉県・女性・35) エッセイ:私のナイショ
- 郵便局賞園木和好さん(福岡県・女性・高2) エッセイ:いかなごのくぎ煮が教えてくれたもの
- 特選(俳句)八木五十八さん(岡山県・男性・58) 俳句:春風とくぎ煮の町へ嫁ぎゆく
- 特選(短歌)瀬戸内光さん(山口県・女性・59) 短歌:デボン紀のままの姿にいかなごを追うを思いて落し蓋をする
- 特選(川柳)茶じじいさん(兵庫県・男性・62) 川柳:いかなごも 少子化の波 来よったか
- 特選(詩)ムク坊さん(神奈川県・男性・80) 詩:おかんよ釘煮を炊け
- 特選(エッセイ)清水沙織さん(兵庫県・女性・36) エッセイ:ザ・バトル・オブ・いかなご
ジュニア部門
- グランプリゆみさん(埼玉県・女性・小2) 詩:ふしぎ
- 準グランプリ】パンダさん(大阪府・男性・小1) 川柳:なかよしね くぎにはみんな 手をつなぐ
- 特選横溝惺哉さん(宮城県・男性・中1) 俳句:くぎ煮食う路線電車の音ゆたか
- 特選横道玄さん(山口県・男性・小2) 短歌:いかなごが好きというだけで友だちさオキゴンドウと人間の僕
- 特選茶々さん(神奈川県・女性・中2) エッセイ:この味、夢とくぎ煮